認知症の治療法3
B ケアとリハビリテーション
廃用性障害について 〜使わない脳はさびつく〜
最近の研究で、使わない脳は退化が早いことが明らかになってきました。逆に活発に働いた脳では神経細胞が新生される可能性も指摘されています。脳は使わないとさびついて機能が低下してしまうのです。これが、廃用性障害です。
認知症患者さんに廃用性障害が起こる仕組み
患者さんは以前には簡単にできていたことが以前と同じようにはできなくなります。社会生活や家庭生活はなかなか患者さんのペースに合わせてはくれないので、患者さんは周囲から取り残され、残っている能力を発揮できる場面がどんどん奪われていきます。例えば、人の話を聞いて理解する能力や話す能力は衰えていないのに、記憶障害のために話の内容が周囲の人とかみ合わず、会話を楽しむことができなくなります。できないために使わない、使わないためにさらに機能が低下する、という悪循環に陥るために、本来の病気以外に廃用性の障害が合併してくるのです。
感情も大切
残っている能力を発揮できなくなるもう一つの原因は、感情面の問題です。患者さんは自分の能力の衰えを感じ取っていることが多く、不安感やこんなはずではないという焦燥感、怒り、といった感情に支配されることになります。感情は人間の認知や行動の基礎であり、感情が崩れると認知機能にも悪影響を及ぼします。また感情面の変化が周囲との摩擦を生み、孤立して、自分の能力を発揮する場所はさらに奪われていきます。
リハビリテーションについて
こうした状況を打ち破るためには、患者さんが生活をゆったりと、しかも役割を持ちながら楽しめる環境を整えることが重要になります。「認知症のリハビリ」が一般的なリハビリと決定的に違うのは、「できないことを訓練する」のは患者さんにとって苦痛でしかなく効果もない、という点です。近年、グループホームや認知症デイケアが重要視されるのは、個々の患者さんの「できること」を生かして人との積極的な交流を保てる場を提供することで、病気の進行を遅らせたり症状を安定させる効果が期待されるからです。
また、最近計算ドリルやゲームなどによる「認知症の予防」がもてはやされています。計算ドリルを楽しめる患者さんには有意義かもしれませんが、嫌がる患者さんに無理に勧めることは、患者さんに苦痛を与えてかえって不利益を生じる可能性があります。あくまでも、ひとりひとりの患者さんの気持ちや能力に配慮してリハビリプランを考えることが大切です。
介護サービスの積極的利用を
患者さんの脳のはたらきを活発にさせるためには、自分のペースで楽しんで行動できるような環境設定と、患者さんにとって心地よい適度な刺激が必要です。それらを家庭だけで行うのは難しいので、早期から、デイサービス/デイケアなどの、公的なサポートを利用することが望まれます。